労働者に時間外労働をさせた場合には、割増賃金(いわゆる残業代)を払わなければなりません。
1 法定労働時間を超えて働かせた時(時間外労働)は25%以上増し
2 法定休日に働かせた時(休日労働)は35%以上増し
3 午後10時から午前5時までの深夜に働かせた時(深夜労働)は25%以上増し
なお、1か月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金を支払わなければなりませんが、中小企業については当分の間適用が猶予されています。
この割増賃金は、すべての労働者に適用されるので、パート、アルバイトなどの短時間労働者に対しても同様に支払わなければなりません。
給与明細
所得税法では、給与を支払う者は支払明細書を交付することが定められています。したがって、従業員に給与を支払う際には給与明細書を交付しなければなりません。
給与明細には、基本給、各種手当、控除する項目と金額等を記載します。これは、事業所が適正に賃金を支払った証明になるので、大変重要なものなのです。
固定残業代
事業所の中で、普段から忙しいところでは、一定額を毎月残業代として基本給に上積みして払っているケースを見受けます。このこと自体は違法ではないのですが、給与明細の書き方や残業代の定め方には相当の注意を払わないと、思わぬトラブルを招き、大きなダメージを受けるおそれがあります。
固定残業代は定められた時間内であれば同額の残業代を支払う制度であり、固定残業代で定められた時間を超えて働いた場合は、差額の残業代を支払う義務が事業者に発生します。
まず、固定残業代が、何時間分の残業かを明らかにしなければなりません。これは当然法定の割増率以上でなければなりませんし、もしその時間を超える残業や休日労働があった場合は、その分をさらに加算しなくてはいけません。また、そのような取り決めをした以上は、仮に残業がなかったとしても、固定残業代は払わなければなりません。
また、「職務手当」等の名目で多めの手当をつけていたとしても、その手当の性質が役職や資格に対してであれば、これを時間外手当にあてることも認められません。
社長さんの配慮で基本給を高くしていても、就業規則や雇用契約に明記していない場合や、残業代の額とこれに相当する残業時間が明らかでない場合には、基本給に残業代を含んでいるとは認められず、25%や35%さらに上積みした額を未払い残業代として請求されるかもしれません。争いになれば、負ける可能性は極めて高いでしょう。
固定残業代の場合、給与明細や雇用契約書にはこのように明記する必要があります。
基本給:月額200,000円、固定残業手当:月額37,500円(30時間分)
基本給:月額237,500円(30時間分の時間外労働手当を含む)
この場合、基本給だけで最低賃金を割ってはいけないことはいうまでもありません。
固定残業をお考えの事業所、すでに運用している事業所は、当センターなどで専門家の意見をよく聞いた上でお考え下さい。
投稿者:社会保険労務士 上里 朝也