今後の働き方において、特に高齢者の働き方に変化が起こります。年金財政のひっ迫や少子高齢化による働き手の不足などによるところもありますが、昔に比べて元気に高齢期を迎える者が増えてきたことも一因となります。令和3年度版高齢社会白書によると今後の就労意欲を調査したところ、4割の方が収入の伴う仕事をしたい(続けたい)と回答していることから、日本の高齢者は高い就労意欲を持ち続けていることがわかります。
令和3年版高齢社会白書より
※各国の60歳以上の人に、今後、収入を伴う仕事をしたいか尋ねたところ、日本を除く国の過半数が「収入の伴う仕事をしたくない(辞めたい)」と回答している。一方、「収入の伴う仕事をしたい(続けたい)」とする割合は、日本が40.2%(44.9%)と最も高く、次いでアメリカ29.9%(39.4%)、ドイツ28.1%(22.7%)、スウェーデン26.6%(36.6%)の順となっている。
それでは、一体どのように変わるのか?見ていきたいと思います。
在職老齢年金
年金給付対象者であっても、仕事をして厚生年金保険に加入している場合、年齢と合計収入額によっては年金が減額、もしくは停止される制度です。現行では60歳~64歳以下の場合、年金(基本月額=年金年額を12で割った金額)と給与(総報酬月額相当額=毎月の賃金+年間賞与を12で割った金額)の合計が28万円を超えると、超えた分の年金支給が停止されますが、令和4年の4月より年金の支給が停止される基準28万円から47万円に緩和されることになりました。65歳以上の場合はもともと47万円なので変更はありません。また、現在は65歳以上で在職中の場合、退職時に年金額が改定されるまで受給額が変わりません。令和4年4月の改正以降は、65歳を過ぎて働いている場合、毎年10月に保険料納付額をもとに年金受給額が見直されます。
年金受給の支給開始年齢の弾力化
現行の年金支給開始年齢は原則65歳ですが、年金の繰り上げや繰り下げが可能です。これまでの支給開始年齢は60歳から70歳まででしたが、令和4年4月の法改正により手続きによって受給可能な年齢が75歳から選択できるように拡大されました。
雇用保険マルチジョブホルダー制度
従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件が週所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たす場合に適用されます。
これに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して20時間以上など一定の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。マルチ高年齢被保険者であった方が失業した場合には、高年齢求職者給付金を一時金で受給することができます。
高年齢者雇用安定法の改正
今年の4月に改正されています。以前投稿した高齢者雇用安定法の改正についてでもお伝えしていますので詳しくはそちらをご覧下さい。
高齢者の働き方に特化した改正となりますが、中年齢の方もどのように働いていくか考えていく。これも「働き方改革」と言えるでしょう。
投稿者:社会保険労務士 阿嘉 哲